一部で根強いファンがいる“幻のジュース”が二月末、約四十年の歴史に幕を閉じる。神戸市兵庫区の「ツルヤ食料品研究所」で製造されてきた、オレンジ風味の清涼飲料水「ネーポン」。十年前から一人で作り続けてきた上田安子さん(68)が、体力的な理由などで廃業を決めた。上田さんは「多くの人にかわいがってもらったが、仕方がない」と名残を惜しむ。(横田良平) 同研究所は一九五四年に創業。元は製菓店で、ジュースや甘酒も作っていた。ネーポンの誕生は六三年ごろ。創業者だった上田さんの義父が、ネーブルとポンカンの果汁を混ぜて考案。現在はオレンジの果肉などを原料に作り、工場での直接販売のほか、市内の駄菓子屋や銭湯、喫茶店などに卸している。 製造は今も手作業。原料をタンクに入れて、一度に六百本分を調合する。配合のレシピなどはなく、長年の勘だけが頼り。回収した瓶は高温で殺菌消毒し、一本一本瓶詰めする。ほかにも約二十種類の