パルチヴァールは出発し、元気に馬を飛ばして、迷うことなく濠のところにやって来た。跳ね橋は引き上げられていた。城はまことに堅牢で、まるでろくろにかけて作ったようだった。そのため、空から飛んで入るか、風に乗って入るかしない限り、地上から攻撃しても損害を与えることはできなかった。 たくさんの塔やいくつかの館がそびえ、見事な防衛が施されていた。たとえこの世のすべての軍勢が押し寄せ、包囲の苦しみが三十年に渡ろうとも、城内の人々は、(包囲を解くための代償として)パン一切れも差し出すことはしなかったであろう。 ―ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ「パルチヴァール」第5巻・パルチヴァールの最初の聖杯城訪問 より 騎士文学にしばしば登場するのが、城の描写だ。王様が住んでいそうなゴージャスなお城ではない。お城=「要塞」。なぜなら騎士とは戦士階級であり、領地が危機にさらされたときには、城が防衛拠点になるものだ