最近7~8年――より正確には米国のニューエコノミーの登場と1997年アジア危機以降――世界の経常収支インバランスは異常である。通常の経済学では解きにくい「異常」な現象がいくつかみられるからだ。 第1に、米国の経常収支赤字は2005年には8000億ドル、GDPの7%近くに達した。それでもドルは平静だ。これは「異常」である。大騒ぎした85年のプラザ合意のころの米国の対外赤字はGDP比でせいぜい3.5%だった。85~87年にドルは暴落し、日本円は1ドル=250円→120円と2倍になった。ところが今日すぐには、ドルの暴落がありそうもなく、この米国の膨大な対外赤字が「持続可能」にみえるのは「異常」である。 第2に、国際資本が、世界経済の周辺国から中心国(米国)に流れているのも「異常」である。伝統的な経済学では、国際資本は資本蓄積が豊富な先進国から、資本形成が旺盛な成長の高い途上国に流れると考えられて