先々週の『週刊東洋経済』と『エコノミスト』に掲載されたものの草稿。 ●『誘惑される意志』(NTT出版) ジョージ・エインズリー著 人はお酒の飲みすぎやダイエット中の過食など後で悔やむことになる行為を日常的に行っているだろう。しかし経済学の辞書には後悔の文字はない。なぜなら彼(彼女)の選択は、利用できるすべての情報をもとに合理的な決定として行われているので、そこには後悔を生み出すような意志の弱さが入り込む余地がないからだ。経済学は合理的経済人を仮定しているので、暴飲暴食や麻薬の摂取、返済する見込みのない借金などの行為を説明する際には、情報の不完全性や、または合理性の基準を弱めることなどでなんとか、これらの現象を説明してきた。 しかし本書では、目先の小さな欲望にとらわれて将来の利益を損なうことこそが、人間の本来の姿であるという。例えば、禁煙中なのに「この1本で最後にしよう」などと理屈をつけて、