あるベテランのラジオのパーソナリティーが、新人パーソナリティーの番組にゲスト出演した。 そこで語られたのは、虚空に向かってひとりでしゃべる才能、ないしは病についてであった。 ひとりで二時間あまりしゃべることができるのは、一種の才能である。一種の病である。 ラジオ好きのおれはそれをおもしろく聞いた。 しかし、よくよく考えてみると、自分自身のことじゃないかと思った。 おれは虚空に向かってしゃべる才能がある。病がある。 しゃべるといっても、声を出して話すわけじゃない。 だれが読んでいるかもわからない、だれも読んでいないかもしれないブログに、自分の言葉をひたすらに書き続けてきた。そのことだ。 民放ラジオなんかに比べたら、無に近いほどはるかに規模が小さく、それこそ本当の虚空を相手にして。 それでもおれは書き続けてきた。 おれには才能がない。金になるような才能がない。 それでも、おれは虚空に向かって書