日本の1人あたり生産性はなぜ低迷しているのか。日本社会は、管理主義的な選抜競争に疲弊して、個々人のやる気や能力を引き出せていない。過去から引き継ぐ社会全体としての階層的な組織構造が問題である。 人生の選択を歪めている日本の制度 今年5月に経済産業省の次官・若手プロジェクトの研究成果「不安な個人、立ちすくむ国家」が発表され、140万ダウンロードを超えるほど話題になっている。 その内容は、個人の価値観や生き方が多様化しているにもかかわらず、「昭和の標準モデル」を前提に作られた制度が個人の人生の選択を歪めており、一定年齢以上の高齢者を弱者として支えるシルバー民主主義から、子供のケアや教育を社会的投資として重視する財政へと転換すべきだと主張する。 経済若手官僚の議論自体は有益で、前半の問題意識には共感するが、本質的に自らのポジションにメスを入れるような改革案にはなっていない。社会・国家の制度に問題