フロリダ州タラハシーの集会で展示された禁書処分対象の本。性的少数者(LGBTQ)や性的暴力に関する本、セックスを描写する本などが米国各地の公立学校図書館から撤去されている=2023年3月21日、Agnes Lopez/©The New York Times
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間接的に疑惑認めた、民事訴訟でのジャニー喜多川氏の証言 まず、簡単に番組内容とジャニー氏の性的虐待問題について整理しておこう(内容は本国版を参照している)。 この一件を追うのは、モビーン・アザー記者だ。ミュージシャンのプリンスを追った評伝『プリンス 1958-2016』 (2016年)や、イギリスのムスリムが共同生活をするリアリティ番組”Muslims Like Us”(2017年)でイギリスアカデミー賞を受賞した実績がある。 冒頭、アザー氏が向かったのは文藝春秋社だった。1999年から翌年にかけて、『週刊文春』はジャーナリストの中村竜太郎氏を中心に、ジャニー喜多川氏の性的虐待疑惑を連載した。一般にこの問題が広まったのもこの記事の影響が大きいだろう。 だが、この連載が続いていた最中の1999年11月、ジャニー喜多川氏とジャニーズ事務所は文藝春秋側を相手に名誉毀損で民事訴訟を起こす。2002
手元に置いた携帯電話がひっきりなしに鳴っている。ほとんどが取材依頼だという。2月24日のロシアによるウクライナ侵攻後、時の人になった。 引っ張りだこになるのには訳がある。相手に目線を合わせつつ、複雑な事象をわかりやすく説明する力。ロシアにもウクライナにもくみせず、膨大な軍事情報をつないで全体像を描き出す分析力。 「彼は言葉の力で一種の社会現象を起こしている」。そう話すのは、2019年、小泉さんを東大先端科学技術研究センター(先端研)に誘った先端研教授の池内恵さんだ。 「彼が話すと議論が整理されていくんです。いろんな人が投げた球を一つずつ拾い、それに答えつつまとめるという、非常に高度なことをやっている」。だが、人気の理由は、明晰さだけではなさそうだ。ときおり垣間見せるユーモアや、硬軟とりまぜた引き出しの多さ。自ら「軍事オタク」ぶりを見せて、楽しんでいるふしもある。 東京大学先端科学技術研究セ
田中芳樹さんの小説「銀河英雄伝説」は、私にとって民主主義の「入門書」とも言える存在だ。 遠い未来の宇宙を舞台に、専制政治の銀河帝国と民主共和制の自由惑星同盟の対立を描くこの作品は、両陣営の名将たちが知略を尽くして艦隊戦を繰り広げるさまが醍醐味だが、腐敗した民主主義と、善政を敷く独裁制のどちらがいいのかという究極の問いを突きつけてくる。 高校生のころ、民主主義という言葉は知っていたものの、それ以上ではなかった自分にとって、この作品は衝撃で、全10巻と外伝4巻を徹夜しながら読みふけった。 田中芳樹さんの原作をもとに製作されたアニメ「銀河英雄伝説」。主人公のラインハルト(右)とヤン・ウェンリー=©田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリー ©加藤直之 そして今から10年前の2012年5月。田中さんにインタビューする機会を得た。私は当時、モスクワ特派員で、プー
業界の首位と2位は単純に言えば競い合うだけの関係ですが、同じ組織のトップとナンバー2となると、支えもすれば競いもする複雑な人間模様を描きます。 最初の出版から今年で40年、2度目のアニメ化が進み、国境も世代も越えて読み継がれているSF小説の大作「銀河英雄伝説」(銀英伝)では、その序盤、異彩を放つ登場人物がトップに「ナンバー2不要論」を具申します。「組織にナンバー2は必要ありません。無能なら無能なりに、有能なら有能なりに、組織をそこねます」――。 この発言は物語の展開を大きく変え、多くの銀英伝ファンの心を揺さぶることになるのですが、著者の田中芳樹さんはこの発言にどんな思いを込めていたのでしょうか。(大牟田透) 「銀河英雄伝説」のオーベルシュタインが唱える「ナンバー2不要論」を語る田中芳樹さん 銀英伝は、銀河帝国のラインハルト、自由惑星同盟のヤンという2人の若い戦略家の攻防を軸に描かれた壮大な
ソ連が崩壊してから12月25日で30年になる。史上初の社会主義超大国としてアメリカと世界を二分し、冷戦を繰り広げたが、経済の悪化や、政権弱体化を招いたゴルバチョフ氏の改革などにより、1991年に消滅した。 物不足、厳しい情報統制…そんなイメージが強いソ連だが、実際はどうだったのか。1980年代末から崩壊までのソ連で子ども時代をすごし、現在は日本で声優として活躍しているジェーニャさんに「私が生きたソ連」を語ってもらった。 ソ連の記憶について語る声優のジェーニャさん ――ソ連での暮らしぶりを教えて下さい。 私はシベリアのノボシビリスクという都市で生まれたんですけど、父が軍人だった関係でリャザンやゴーリキー(現在のニジニノブゴロド)など転々としていました。 ものは少なかったですね。それはあとから分かったことで、当時は普通だと思っていました。商店に行っても、陳列棚が空っぽの記憶しか残っていません。
気になるのは、産経新聞が「日本人のノーベル賞受賞者は28人目」と書いているように、複数のメディアが真鍋氏について「日本人」と書いていることです。先日は岸田総理も「人類に大きな貢献をされたということで、日本人として大変誇らしく思っている」と祝福の言葉を述べました。 しかし真鍋淑郎氏は米国籍のアメリカ人です。日本の法律では成人した日本人が外国の国籍を取得すると、本人の意思確認がされないまま日本国籍がはく奪されてしまいます。真鍋氏のようなケースでは「米国籍を持ちながら日本国籍も持ち続ける」ということは不可能なのです。 真鍋氏に限らず、海外に渡った日本人の研究者やビジネスパーソンが仕事上の理由から外国の国籍を取得したことで日本の国籍を失ってしまったケースは多くあります。 数十年前からスイスに住む野川等氏は現地で会社を経営していました。同氏の会社が入札に参加する際に「スイスでは社長にスイス国籍がない
ポルシェの創立者であるFerdinand Porsche氏はかつて次のように語っていました。「我々は、誰にとっても『本来は不必要だけれど、誰もが欲しがる車』を作っていく」 車種によってポルシェは4秒で時速100キロに達することができるものの、このような瞬発力のある車が日常生活において果たして「必要」なのかというと、答えは冒頭の創立者が言うように「ノー」なのでしょう。 それでもドイツでポルシェが根強い人気を誇るのは、ポルシェに「必要性」以外の魅力があるからです。 時速制限のないドイツの高速道路で誰よりも早く走れるという爽快感、ポルシェに乗っている時の他人からの羨望の眼差し、そして何よりも「最もカッコいいスポーツカー」というイメージに助けられてドイツのポルシェは人気を保ってきました。 ところがドイツでは最近、「ポルシェに対してポジティブなイメージを持っている」のは「ほぼ全員が男性」だということ
彼らは、図書館や地下鉄で、彼の本を読んでいる。彼の著作に特化したオンライン読書クラブを立ち上げた。音声と映像を何時間分もアップロードし、彼の革命思想の教えを広めた。 毛沢東は、中国のZ世代(訳注=1995年以降の生まれで、高度経済成長期やデジタル時代の進行とともに成長した世代を指す)の間で復活を遂げつつある。数十年にわたる不断の政治キャンペーンで何百万もの人命を奪った中国共産党の最高指導者は、1976年の死去からずっと後の生まれで当時の影響を被っていない彼らを奮起させ、元気づけている。彼らにとって毛沢東は、もがき苦しむ名もなき存在の絶望的な自分たちに語りかけてくれる英雄なのだ。 社会的不平等の拡大問題に取り組む現代の中国にあって、搾取的なビジネス階級に向ける多くの若者たちの怒りの感情を毛沢東の言葉は正当化してくれる。彼らは、毛沢東の足跡をたどって中国社会を変えたいと望んでおり、中には、必要
■インドで進化 輸出も始まる インドで販売されているカリカリ。フレーバーは左からソルトペッパー、ワサビ、スパイスマニア、チリガーリック(亀田製菓提供) インド版柿の種「カリカリ」は、2020年1月に販売が始まった。亀田製菓が現地企業と合弁会社を設立し、工場も現地に新設。デリーのほか、ムンバイやベンガルールなど主要都市の1000以上の店舗で販売されている。 135グラム入りで99ルピー(約140円)と、インドでは少し高級なお菓子という価格だ。思いがけずコロナ禍の影響を受けているものの、販売当初から約1年で売り上げは4~5倍増となり、オンラインや自販機での販売も始めるなど、インドでじわじわ柿ピーファンを増やしている。 日本で売られている「亀田の柿の種」と比べると、粒が大きく、そして硬いのが大きな違いだ。ピーナツとの比率も65対35(日本は7対3)と細かく刻む。事前に行った現地市場調査の結果から
■「新しい人生が始まった」 「私はすべての人間が平等であると信じます。今日、新たな人生を手に入れたと信じます」 昨年10月下旬、刺すような日光を遮る天幕の下で、数百人が手を合わせ、僧に続いて唱和した。改宗の儀式だ。終わると、仏教徒になった証明書を受け取る。「インドのへそ」とも呼ばれ、国土の中心に位置するナーグプル。毎年9~10月の数日間、改宗をする人やそれを祝福する仏教徒ら数十万人が集まる。 約900キロを鉄道でやってきた大学生ラワン・パル(23)は、「不可触民(ダリト)」と呼ばれてきた、カーストで最底辺層の出身。両親の希望で、改宗式にやってきた。「家を借りるのが難しく、ヒンドゥー教寺院に入ることも許されない。学校では教師から避けられ、警察からも嫌がらせ。犬のような扱いだった」 2007年に改宗して以来、毎年この地に来るナラヤン・アムテ(69)は「犬の方がまだいい」とさえ言う。「犬は村の井
ナイロビの街のあちこちに取り付けられたファーウェイ製の監視カメラ。キノコの帽子の部分に「HUAWEI」のロゴが見える。カメラ部分はぐるりと回転し、ズームもでき、遠隔操作で映像を見ることができるという=2020年2月2日 中国がアフリカに「監視社会システム」を輸出している、という話を聞いたのは昨年秋のことだった。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が、世界のデジタル覇権を制するため力を入れている「デジタルシルクロード」の好例だという話だった。 街じゅう監視カメラのあの社会? 信号無視したら顔認証カメラで人物が特定され、交差点の画面に顔写真がさらされるシステム? 上海や北京の特派員などで6年半を中国で過ごした身としては、まさかと思いながら、ケニアへ飛んだ。 【合わせて読む】足跡すべてを政府が把握 中国の監視社会とは ■ファーウェイのカメラ、そこかしこに 2月上旬、首都ナイロビに着くと、まさに
中国企業の監視カメラシステムは、訪れた日本の経済人の顔を識別して性別や大体の年齢をはじき出した=2018年9月11日、北京市、福田直之撮影 ■「あしき前例」ではつかみきれない中国の変化 ――監視社会化が進む中国の現状は、日本でも知られるようになってきました。その中国を、日本では、ジョージ・オーウェルが描いた「1984年」のようなディストピア(暗黒の世界)として論じられることもあります。2019年に出版された著書「幸福な監視国家・中国」では、監視社会化を肯定的に受けとめる中国人に言及されました。これは日本人にとっては驚きの事実ともいえますが、多くの中国人はなぜこうした流れをポジティブに受けとめているのでしょうか。 「監視社会化」は、人びとのプライバシーが政府や企業に筒抜けになるという負の側面があるとともに、多くの人びとにとっては行政や金融、医療などのサービスがより便利で効率的に受けられる便益
【関連記事】世界で急成長の日本アニメ、海外勢が猛追 輝き続けるカギは? 片渕監督の眼 【関連記事】なぜ日本アニメは世界で愛される ディズニーとは対極の「ガラパゴスの力」 ――日本のアニメには、見ている人が自分自身の人生と重ねて入り込める、共有できるストーリーが多いと、海外のアニメファンの多くが言っていた。だからこそ、国籍に関係なく、様々な国で受け入れられるのではないでしょうか。 えっとね、違うかもしれないんだけども、ある意味、日本のアニメーションがティーンエージャーより上の世代に向けて特化していった、対象年齢を特化していった結果だと思うんですよ。例えば、ピクサーなどはまだ子供のために見せるという使命が残っていますよね。日本はもうないですよ。 それはね、逆に言うと、そこが穴場なんです。「我々の世代に向けて語ってくれるメディアってない」と、ティーンエージャーや20代前半の人が思うわけです。とこ
■迷惑かけない子、が夢ですか 23歳で日本に来てすぐのころ。子どもが生まれたばかりの人が、「どんな子に育ってほしいですか」と聞かれて、「好きなことを自由にやったらいいけど、ひとさまに迷惑だけはかけないような子になってほしい」と答えているのを聞いて、びっくりしたんです。「迷惑をかけない子」って一体どんな子だろう……。バンドとか大きな音を立てるようなことをしない子? それとも地球を汚さないように地球環境に気を配る子? うーん。そもそも、それって親が抱く子どもへの夢なのかな? と、まじめに考え込んでしまいました。 ほかに不思議だなあと思ったのは、ワイドショーなどで見る有名人の謝罪会見でした。女性への暴力など大変深刻な事件を起こした人が、謝罪会見で「みなさまにご迷惑をおかけしました」と言うのが不思議でした。謝罪するべき相手は被害者やその家族であって、視聴者にもマスコミにも、まったく迷惑はかかってい
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