近年、織田信長の人物像を見直そうという動きが、研究者の方の間でも顕著になってきている。大河ドラマ『麒麟がくる』の織田信長(演・染谷将太)も新たな信長像を打ち出して来ている。かつて歴史ファンを虜にし、全盛期には10万部を超える発行部数を誇った『歴史読本』(2015年休刊)元編集者で、歴史書籍編集プロダクション「三猿舎」代表を務める安田清人氏がリポートする。 * * * 革命家、時代の寵児、天才戦略家、既存の価値観の破壊者、第六天魔王……といった従来の織田信長のイメージは、実証的な研究というよりは小説やドラマなどのフィクションの世界で、どんどん膨らんでいったものだろう。こうした信長像については、 古くは 歴史学者の故・脇田修さんが『織田信長 中世最後の覇者』(中公新書)でも警鐘を鳴らしている。 信長が実際に行なった政治・政策を見てゆくと、意外なほど守旧的だったり、中世由来の社会常識や既存の価値