B 児童虐待 児童虐待とは、保護者がその監護する児童に対し、身体に外傷が生じる(または生じ得る)暴行を加えたり、わいせつな行為をしたり(またはさせたり)、保護者としての監護を著しく怠ったり、著しい心理的外傷を加える言動を行うことをいう(児童虐待防止法2条)。以上の定義を前提として、児童虐待に関わる各種統計や原因論を検討することにする。 1 件数・態様・特徴 児童虐待は家庭や社会内施設という密室内の事件であるだけに、その正確な実態を把握することは極めて困難である。したがって、以下にあげられる各種の統計は、実際に行われている児童虐待の氷山の一角に過ぎない。表面化した件数に比べて、暗数は10倍程度存在するとも言われている。実態把握が困難な理由として、①各種の統計は、児童相談所や警察などの関係機関を対象にしたものだから、これらの機関に関わらなかった事例は統計に現れてこない、②医療や保健の現場におい