21世紀開幕とともに作家活動をはじめた長谷敏司だが、本格SFで頭角をあらわしたのは2009年発表の長篇『あなたのための物語』からだ。それに続く『BEATLESS』で、ぼくは度肝を抜かれた。ヴィリエ・ド・リラダン『未来のイヴ』をはじめSFはさまざまな人造美女を描いてきたが、この作品はその系譜の最先端に位置する。新しい時代の小説というだけではない。テーマへ数段深く切りこみ独自の認識に到達している。そのテーマとは、文学的には「人形(ひとがた)との恋」であり、思弁の命題ならば「哲学的ゾンビとの相思は可能か?」だ。 作品のたたずまいに即してみれば、『BEATLESS』は『セイバーマリオネット』から『機巧少女(マシンドール)は傷つかない』に至るアニメ/ラノベの流れのなかにある。このカテゴリの多くの作品は----"ことごとくが"と言いたいところだが、ぼくこの分野は不案内なので----、人造美少女はデフォ