ある日、突然気づく。オレがやりたかったのはこれじゃないかと。何もかも捨てて飛び込んだその世界は人生経験や学歴など役に立たないどころか、邪魔だった。 会社を辞めて入門しよう あれは、まさに天啓というべきものだったと思います。今から10年半前の'01年11月、三井物産の商社マンで当時25歳だった私は、交際していた彼女と一緒に巣鴨の商店街を歩いていました。巣鴨は当時彼女が住んでいた街。その日は休日で、美味しいと評判の餃子屋さんに向かっていたときに、ふと目にしたのが「立川志の輔落語会」の幟旗でした。 当日券あり。そう書いてあるのを見て、ふらりと入ってみました。それまで一度もナマで落語を聞いたことがなく、テレビで放送していても聞き流す程度。そんなファン以前の人間だった私が、数時間後にはあまりの衝撃に茫然としていました。笑いあり、涙あり。そして、志の輔師匠の語りとともに、登場人物たちがまるで目の前にい