私は2009年夏、『2011年新聞・テレビ消滅』(文春新書)という本を上梓し、そのなかでマスメディアがなぜ立ち行かなくなっているのかをビジネス構造の観点から論じた。なぜビジネス的に描いたかと言えば、それまで出回っていたマスメディア論の多くが、「日本の新聞は言論が劣化している」「新聞記者の質が落ちている」といった情緒論ばかりだったことに辟易していたからである。そうした情緒論ではなく、純粋にビジネス構造の変化からマスメディアの衰退を論じようとしたのが同書だった。 本書はその続編に当たる。今回はビジネス論ではなく、ただひたすらその言論の問題を取り上げた。しかし私は巷間言われているような「新聞記者の質が落ちた」「メディアが劣化した」というような論には与しない。そんな論はしょせんは「今どきの若い者は」論の延長でしかないからだ。 そのような情緒論ではなく、今この国のメディア言論がなぜ岐路に立たされてい