天皇大権と首相権力の曖昧な関係 (前回から読む) 憲法は意思決定システムの根幹である。だが、それは生き物の如く変化していくが故にバリエーションは多様となる。それを理解せず、意思決定システムが行き詰ると何かと改憲を打ち出す向きは多い。首相公選論や参議院強化論がこれにあたるが、その実現可能性は低く、政治的な牽制以上の意味は持ちにくい。 もちろん、オルタナティブが万策尽きれば改憲した方が良いだろう。ただし、意思決定システムは制定者の狙い通りには生きてくれない。それを肝に銘じるべきである。 明治憲法を制定した伊藤は、その後の育成プランまで立てていた。様々な政治勢力に試みた説得と妥協によって、条項に様々な曖昧さと矛盾が残されていたからである。自分こそが、明治憲法を漸進的に育て上げなければならない。この強烈な自負心によって、明治憲法には生命力が吹き込まれた。だが、伊藤は次第に、曖昧さと矛盾が時限爆弾の