尖閣諸島で日中の緊張が高まり、沖縄では新型輸送機オスプレイの配備に地元が反対するなど、あらためて日米同盟が問い直されている。こういう状況に乗って『戦後史の正体』という本が20万部を超えるベストセラーになっている。著者は孫崎享氏。外務省で国際情報局長などを歴任した外交官だ。 その内容は、単純な陰謀史観である。戦後の首相を「対米追従派」と「自主派」に分類し、前者は長期政権だったが、後者はアメリカの工作によって失脚したという話だ。確かに終戦直後には進駐軍に抵抗して失脚した政治家も多いが、21世紀に入っても鳩山由紀夫氏や福田康夫氏までアメリカの陰謀で失脚したというストーリーは荒唐無稽で、具体的な証拠は何もない。 長期政権だった吉田茂、池田勇人、中曽根康弘、小泉純一郎などが対米追従路線をとったのは、それ以外の選択肢がなかったからだ。本来はサンフランシスコ講和条約で独立したとき、憲法を改正すべきだった