・白石良夫「かなづかい入門 歴史的仮名遣 vs 現代仮名遣」(平凡社新書)で今一つ考へたことがある。形式名詞「こと」である。最近、これは漢字で「事」と書かれる。以前はかうひどくなかつた。この傾向は、正確には分からないが、やはりワープロ普及以後に徐々に強くなり、それがほとんど常に「事」と漢字書きする現状になつたのではないかと思はれる。要するにIMが変換するからである。こちらの意図と無関係に、変換できるものは変換する。形式名詞? そんなのは知らぬ、しかし「こと」は「事」ではないか。変換! 漢字に変換されたのだからそれで正しい、直しは不要といふわけで、マスコミがまづ使ひ出した。それを真似して、クイズ番組等でタレントが「事」と漢字書きした。それを見た視聴者がならば私もで「事」と漢字書きした……こんな経過をたどつてで形式名詞「こと」が「事」と表記され、定着して(まだしてゐないかも)いつたものと思はれ