YouTube 時代の映像表現:個の喪失と群衆による創造の可能性 山形浩生 (『Art IT』16号 2007年夏/秋号 2007/08) 要約:マクラーレンのアニメはつまらないけれど、新メディアへの新しいアプローチと同時に、カメラの買えない一般人にもできる民主的アート、という点で価値があった。それは個の表現のはずだったが、YouTubeは民主的アートであるとともに、群衆による共同製作としての側面も持ち、個性の表現とされることの多いアートを群衆的な変な代物に仕立て上げる先鞭にもなっている。 ノーマン・マクラーレンは、実験アニメの先駆者として知られるカナダの映像作家だ。かれが活躍したのは 1950 年代あたりだったっけ。その作品はいろいろあるけれど、かれの名声は「スターズ&ストライプス」を初めとして、何かを撮影するのではなくて、フィルムそのものに傷をつけたりしてアニメを作る各種の短編作品だっ