……ああ……酔うた酔うた。 ……どうだ斎木(さいき)……モ一つ行こう。脊髄癆(カリエス)ぐらい酒を飲めば癒るよ。ちょっとも酔わんじゃないか君は……。 ナニ……恐ろしい暴風雨(しけ)だ?……。 ウン。近来珍らしい二百二十日(か)だよ。夜半(よなか)過ぎたら風速四十米突(メートル)を越すかも知れん。……おまけにここは朝鮮最南端の絶影島(まきのしま)だ。玄海灘と釜山(ふざん)の港内を七分三分に見下ろした巌角(がんかく)の上の一軒家と来ているんだからね。一層風当りがヒドイ訳だよ。……世界の涯に来たような気がする……ハハハ。しかしこの家(うち)なら大丈夫だよ。その覚悟で建てた赤煉瓦(れんが)の温突(おんどる)式だからね。憚(はばか)りながら酒樽と米だけは、ちゃんとストックして在るんだ。十日や十五日シケ続けたって驚かないよ。ハハハ……。 イヤ。よく来てくれた。吾輩の竹馬の友といったら、今では君一人なん