昨年日本で初めての「理系文学」の賞として創設された日経「星新一賞」(主催=日本経済新聞社)の受賞作が3月13日発表された。文学界に限らず、日本の社会に大きなインパクトを与えそうな理系文学。同賞の創設や受賞作選考に深く関わった二人が、「理系」の秘めた力と可能性を語り合った。 精緻な論理と広い世代の心をつかむ普遍性が魅力 鏡:僕が学生時代にSF作家クラブに入ったとき、星新一さんと緊張しながらお会いしたのを覚えていますが、新井さんは、SF雑誌『奇想天外』の新人賞で、審査員をしていた星さんに絶賛されたのがきっかけですよね。当時まだ高校2年生でしょう。 新井:結果的には佳作だったんですけど、星さんに作家としてのデビューの場を与えていただいたり、とてもお世話になりました。 鏡:それまで星さんの作品は? 新井:中学生のときに、作品はほぼ読み尽くしていました。特に『ボッコちゃん』や『ようこそ地球さん』に収