著: 土門 蘭 実家の近くの朝日町公園の時計は、直しても直しても時間が狂うという噂で、幼いころはそれが気味悪かった。 ここに来るのは何年ぶりだろう。遊具はぴかぴかに新しくなっているのに、時計は古いままで、わたしはコートのポケットに手を突っ込みながらそれを見上げる。取り出したスマートフォンの液晶は午後六時二十三分を示していて、公園の時計はやはりそれより五分ほど遅れていた。 三月。すでに日は暮れていて、夜風が冷たい。吐く息が、薄暗い空気に現れては消えていく。 「やっぱり狂っとる」 そうつぶやく声が聴こえた気がして、わたしは後ろを振り返った。でもそこには誰もいなくて、無人のブランコが二つ並んで静かにぶら下がっているだけだった。 わたしは自分がひとりごとを言ったのだと気付く。 ほっとすると同時に自分をおかしく思いながら前を向き、ぎくりとした。今まで誰もいなかったはずなのに、そこにはいつの間にか高校
昨今では多くの自治体や企業がリサーチ&アートプロジェクトを主催や後援といった立場で開催し、集客数を伸ばしています。KYO−SHITSUも、ひとつのアートプロジェクトです。では、アートプロジェクトとは何か?立ち返ってみるために、連載「アートプロジェクトを捉える」を通して紐解いていきます。 今回のテーマは「アートプロジェクトを運営する人たちはどういう人たち?」。東京都北区王子に拠点を持つ、コ本や honkbooks(以下、コ本や)へのインタビュー。東京藝術大学大学院 映像研究科出身のメンバーで構成されたコ本やは、本屋のように見えるウィンドウのなかで、さまざまな企画を開催している場としても機能しています。プロジェクトを企画し、運営することはどういうことか?場所に根付くアートプロジェクトとは?運営するドキュメント・ディレクター 和田信太郎さん、アーティスト 青柳菜摘さん、ブック・ディレクター 清水
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