「スタント先生は特別な経験をしたからこそ、強い人間になれた。私は、そんな経験はしていないから、先生のように強くはなれない」 このコラムの主人公である早稲田大学国際教養学部の教授、カワン・スタントを、まるで得度した僧侶のような「達観」した人物のように、考える人もいるだろう。 インドネシアの貧しい家に生まれ、継母から愛を受けることなく育ち、中国系インドネシア人であるために迫害を受けた。日本に留学してからも外国人であるために仕事が見つからず、その能力を積極的に評価してくれる人がほとんどいなかった。そんな状況にもめげず、工学・医学・薬学・教育学と4つも博士号を取得し、現在は早稲田大学の教授を務める。 スタントは確かに、今の満ち足りた環境で育った日本人には、簡単に想像できないような過酷な環境にも、へこたれることなく真っ向勝負で立ち向かい、高い壁を乗り越えてきた。だがそんなスタントも、心身ともにズタズ