福島の原子力発電所事故をきっかけに、技術やその根底にある科学との向き合い方が問われている。「日本の社会には科学リテラシーがない」。京都大学大学院総合生存学館(思修館)の山口栄一教授は、この問題意識から新著『死ぬまでに学びたい5つの物理学』(筑摩選書)を執筆した。同書に記したような天才物理学者たちの知の創造プロセスを知ることが、科学リテラシーを高めるための第一歩になると山口教授は語る。(取材・構成は、片岡義博=フリー編集者) ――『死ぬまでに学びたい5つの物理学』という本は、物理学の入門書でありながら、文系の読者も面白く学べることを目指しています。そして、序章のタイトルは「強く生きるために物理学を学ぶ」。一般的な物理学の書籍とは一線を画していますが、この本を書くきっかけから伺いたいと思います。 山口 私は1990年代の終わりまで永らくフランスに住んでいました。ところが帰国したら日本は大変なこ