【夢の新薬 光と影】(上) 「現実に起こるなんて、思ってもみなかった」 近畿大学医学部(腫瘍(しゅよう)内科)の教授、中川和彦(53)は、最初に投与したころの「衝撃」を忘れない。数週間で肺がんが縮小した患者のCT画像を見たとき、「何かの間違いでは」と目を疑ったという。関連記事イレッサ訴訟、問題は迅速な情報提供薬害イレッサ訴訟 「大きく動き出す」…記事本文の続き 中川は未承認薬「ZD1839」の国内臨床試験(治験)を担当していた。最初に錠剤を手にしたのは平成10年ごろ。のちに「イレッサ」の商品名で知られる肺がん治療薬だった。 がん細胞と同時に正常細胞まで殺してしまう従来の抗がん剤は、骨髄への障害や脱毛など、重い副作用が避けられない。これに比べると、がんの進行をとめる効果は大きいとはいえなかった。 ちょうどこの時期、がん種別で胃がんを抜き、肺がんが国内死因のトップに。年間5万人以上が死亡し、内