書評(文献レビュー) 政治外交史 【書評】テッサ・モーリス・スズキ著/ 田代泰子訳『北朝鮮へのエクソダス―「帰国事業」の影をたどる』(朝日新聞社、2007年) September 10, 2007 外交 政治 歴史 政治外交検証:書評 評者:西野純也(慶應義塾大学法学部専任講師) 「帰国事業」によって、1959~84年にかけて93,340名の在日朝鮮人(日本国籍保持者6,839名含む)が北朝鮮へと渡った。事業は25年に及んだが、61年までの2年間で全体の80%が帰国船に乗って新潟港をあとにした。そこには様々なアクターが関わったが、これまでは北朝鮮政府や朝鮮総連、日本の「左派」勢力やマスコミが主な非難の対象となってきた。 本書では、日本政府および日本赤十字こそが帰国事業の「発起人としてもっとも大きな力をふるった」(100頁)という事実が、2004年に機密解除されたジュネーブの赤十字国際委員会