昔々、ある国に野蛮な王様がいた。王様は壮大な円型闘技場を作った。命令に違反した容疑者はそこへひきだされる。闘技場の一方の端には、二つのドアがあり、容疑者はそのどちらかの扉を開けなければならない。一方の扉の奥には、 その国でもっとも狂暴なトラが潜んでおり、 一方の扉の奥にはその国で最も美しい娘が隠れている。 虎の扉を開けた容疑者は、たちまちズタズタに引き裂かれ骨になってしまう。 美女の扉を開けたものは、その瞬間に許されて彼女を花嫁に迎えることになる。 ――それが王様のユニークな裁判のやり方だった。 王様には目に入れても痛くないほど溺愛している一人娘がいた。 彼女は身分の卑しい若者と恋に落ち、二人は王様の目を盗んで密会を重ねていたが、とうとうバレてしまい、若者は闘技場にひきだされることになった。 そして、裁判の当日――闘技場は超満員となった。 観客はもちろん誰一人として、どちらの扉の奥