春の日差しには程遠い、寒さに震える増田の民は、暖を取ろうと灼炎鳥(ホッテントリ)の確保に勤しんだ。 しかし灼炎鳥を手に入れることのできるのは、ごく少数の選ばれし増田のみ。ここ最近では増田11人衆を名乗る一部のエリート集団が灼炎鳥を独占しており、多数の貧しい増田民は身の凍る思いで湖に釣り糸を垂らしていた。灼炎鳥は湖のなかを泳ぐ鳥であり、釣るものだからだ。 「はぁ……やはり釣れんか……」 老人は深い溜息をつく。幾数年を生きながらえた経験と勘こそが老人の武器であったが、如何せん彼の紡ぐ文体は堅苦しすぎて、ブクマカ鳥たちは喰いつかないのだった。 「おじいちゃん、おじいちゃん」 今年で五歳になる孫娘が、老人の外套を引っ張った。 「エサの主語が小さすぎるんじゃないかな。主語を大きくすれば、ぜったい釣れるよ」 老人は目を細めて微笑んだ。嗚呼なんとこの子は聡明なことだろう。 さっそく釣り針に特大の主語を括
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