子供たちにとってテレビの夕方の再放送は特別な時間帯であった。午後三時半過ぎ、早めに帰宅すると家事を一通り終え一息ついた母がドラマを観ている。私に気付いたその横顔がこちらに向けられる。 「ちょうどよかったわ。お留守番できる?」 そう言うと母は近所の商店街へと買い物に出かけた。一人になった居間でテレビのチャンネルを変えると「太陽にほえろ」が始まる。私は何度も何度も繰り返し放送される再放送を観て育った。「ジーパン・シンコその愛と死」が放送されるときは走って帰る。あの殉職シーンを何度追体験したことだろう。私は「サザエさん」や「ドラえもん」が今尚放送されているようにこういう当たり前の時間がいつまでもずっと続くと思い込んでいた。 時は流れ1987年11月、地上波から永遠と思われていた時間が突然消える。本放送を終えたばかりの「あぶない刑事」の再放送が、時が止まっていたこの時間帯を一気に塗りつぶしたのだ。

