深い沈黙の水底におりてゆくと そこは音のないブルーな世界が 広がっている。 町も人も工場もすべて静寂の中に 埋もれていくようである。 かって聞こえていたやさしい 鳥の声や風の渉る音、せせらぎの 流れの中に息づいていた安らぎの 響きはもうどこからも聞こえて こない。 大地の色と水底の色、その二つの 色によって、作り出されてゆく 絵画の世界に、なぜか心が 惹き付けられてゆく 懐かしい郷愁がただよう中に 沈み込んでくる寂寥、重い沈黙に とらわれつつ、無言の町はその姿を 表し、人の息吹の消えた道、陸橋、 運河が続く そんな中に、自らの姿を しっかりと大地に根を下ろして いるかのように描い自画像に 強い意志の現れを感じます。 聴覚を失ってから絵を描き始めた 松本竣介の世界は静けさに満ちて いる水面と激しい内面がせめぎ あっているような気がするのです。 モンタージュの重なり合った 風景と人物があるとき