2006.12.16 男たちの帝国 カテゴリ:私事・昔のことなど 「男たちの帝国」(星乃治彦著:岩波書店刊)という本を読んだ。題はちょっと変わっているが、著者はドイツ近現代史の専門家で、副題は 「ヴィルヘルム2世からナチスへ」 となっており、宣伝用の帯には 「セクシュアリティから歴史を問い直すクィア・ヒストリー」 と書かれている。 本の冒頭では、第二次大戦中にドイツの暗号解読などで成果をあげ、コンピュータ開発にも貢献したイギリスの天才的数学者、チューリングが、「同性愛」 という 「犯罪行為」 で逮捕され、(イングランドでは、1998年まで同性愛は刑罰の対象だったという)、最終的に自殺に追い込まれたことや、アップルのリンゴのロゴが、自殺した彼に対するオマージュではないかといった話が紹介されている。 本論にはいると、まずビスマルクを失脚させて対英仏強硬路線をひた走り、第一次大戦を引き起こして、
■近代ドイツの「性政治学」は ヴィスコンティの名作『地獄に堕(お)ちた勇者ども』でも描かれているように、ナチは男性の同性愛に対して矛盾した態度を取った集団だった。「排他的で強力な同志愛」で結ばれたナチはそれじたい同性愛的な要素が強く、実際の同性愛者も少なくなかったにもかかわらず、表面的にはそれを激しく嫌悪していたのだ。ナチ内部の同性愛者は粛清対象となり、強制収容所送りとなった一般の同性愛者は1万人以上、ともいわれる。 なぜこんな屈折した事態が生じたのか。「同性愛、イエスかノーか?」といった二者択一の理論では、答えが見えてこない。そこで著者は、「異性愛と同性愛」といった境界を取っ払い、性愛の問題をグラデュエーションでとらえる「クィア理論」で、ナチに至る近代ドイツの“性政治学”の分析を試みる。するとそもそも「同性愛者」そのものが、少数者を異化し排除するために政治的に作られたカテゴリーだという構
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