自分の家や家族や身内や祖先について悪く言われれば心中穏やかではいられない。また、誰しも身内や一族については誇りを持ちたい。そういう考え方が、将来を担う子供や若者には大きな自信とも、励みともなるからである。このような思いは、母校に対しても、国家に対しても相通ずるものだ。家族愛、愛校心、郷土愛、そして愛国心なども、それぞれ根は一つと考えてよい。 昭和19年刊『ヨイコドモ・下』は二年生の修身教科書である。同16年版は色刷りであったが、戦局唯ならぬ事態を映して黒刷りになり、紙も質が落ちている。だが、内容は力強い。 《十九 日本の國 明カルイ タノシイ 春ガ 来マシタ。日本ハ、春 夏 秋 冬ノ ナガメノ 美シイ 國 デス。山ヤ 川ヤ。 海ノ キレイナ 國 デス。コノ ヨイ 國ニ、私タチハ 生マレマシタ。オトウサンモ、オカアサンモ、コノ 國ニ、オ生マレニ ナリマシタ。オヂイサンモ、オバアサンモ、コ