正月早々、事件だ。あの大橋 仁が3冊目の写真集を上梓した。しかも、とんでもない本を。 『凄絶ナリ』ー。アラーキーこと、荒木経惟にそう言わしめた99年刊行の処女作『目のまえのつづき』(青幻舎)。赤く染まった表紙の写真は、一見すると繊細で落ち着き払った雰囲気だが、よく見るとそれがシーツに染み渡った鮮血だと分かる。しかも異常な量の、人間の血だ。 19歳のとき、義父の自殺現場 第1発見者となった大橋。救急車を呼ぶとともに、現場を写真に収めた。その後、幸運にも一命をとりとめた義父のその後も含めて、生死のジェットコースターを1冊の本に。〝生きること、死ぬこと〟をきれいごとで描くことなく、裸一貫、カメラ1つでブツかった。ページをめくれば、様々な感情に揺れうごく魂の咆哮が聞こえてくる。 そんな大橋は、寡作な作家だ。次作『いま』(青幻舎)が刊行されたのは6年後のこと。10人の妊婦からオギャーと赤ん坊が飛び出