遺伝子組換え食品の安全性 名古屋大学医学部細菌学講座 太田美智男 始めに 遺伝子組換え食品は人類にとって不必要な、あるいは有害なものであろうか。遺伝子組換え食品が悪いとする根拠は、(1)安全性が確認されていない。(2)アレルギーの原因となるかもしれない。(3)生態系を乱す。(4)米国の一部の企業に組換え作物の種子が支配される、などであり、一方組換え作物の利点は、(1)農薬使用量を減らすことができる。(2)収穫量の増加。(3)砂漠など劣悪な環境で育つ作物が可能となる。(4)長期保存できるようになる、などである。 物事の是非を考えるときは正確な知識に基づいて行う必要がある。現在すでに市場にある組換え作物は大部分、大豆、トウモロコシなどに、(A)昆虫を殺す蛋白(BT)の遺伝子を組み込んだもの、(B)除草剤耐性遺伝子を組み込んだもの、である。BTはバチルス・チュリンゲネシスという菌がつくる殺虫蛋白