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ブックマーク / note.com/sugaya03 (8)

  • ラーメンズ「アトム」(2003)|すが家しのぶ

    “芸術知能犯”との異名を持つコントユニット・ラーメンズが2003年に発表したコント『アトム』は、未来が輝かしいものになっていると信じていた男(片桐仁)がコールドスリープから目覚め、三十年後の世界(=現代)に生きている息子(小林賢太郎)の頬に触れるシーンから始まる。そう、男には息子がいる。男が眠っている間、その姿をじっと見守り続けてきた息子である。 男は彼から情報を得ようとする。かつて、自分が想像していたような、輝かしくきらびやかな未来を感じるために。事実、未来は訪れていた。近眼なのに裸眼で過ごせている息子の目に貼られているコンタクトレンズ。コードも体もない折り畳み式の電話。目的地への行きかたを教えてくれるカーナビゲーションシステム。それらは三十年前にはなかった、未来のカタチだった。 だが、それが現実の未来の限界だった。 犬のロボットは、遠くにボールを投げても取りに行かない。その場で転がっ

    ラーメンズ「アトム」(2003)|すが家しのぶ
  • イッセー尾形「医者の新築」(1982)|すが家しのぶ

    屋」の言葉の通り、専門的なことは専門家に任せるべきである。中途半端に身に付けた生兵法は大怪我の基になりかねない。とはいえ、この広い世間においては、頼りにならない専門家というのも少なくない。事実、近年においては、胡散臭い医療法を喧伝する医者や、何処で得たのかも分からぬ怪しげな情報を広めるジャーナリストなどの横行が、随分と話題になった。こういった類いの人間ははっきり詐欺師と断ずるべきなのだろうが、如何せん、世の常識から外れている人種を無条件に評価しようという安易な反権威主義者というのも少なくないから実にややこしい。こうなると、その良し悪しを判断するために、素人であれども最低限の知識が必要になるのだろうだが、それでは専門家が存在する意義が分からなくなってしまう。出来ることならば、素人である我々を悩ますことなく、そういった害悪になりかねない輩は専門家同士で上手く排斥していただきたいものだが

    イッセー尾形「医者の新築」(1982)|すが家しのぶ
  • シティボーイズ「灰色の男」(1993)|すが家しのぶ

    「サカキバラさんはね、まだ灰色なんですよ」シティボーイズによる1993年の公演「愚者の代弁者、西へ」で演じられたコント『灰色の男』における、ツジ(きたろう)の台詞である。幼女誘拐殺人の容疑者として逮捕されたサカキバラ(斉木しげる)に団地から出て行ってもらうため、住民の代表として彼の家を訪れたニシオカ(大竹まこと)とツジ。しかし、サカキバラは買い物に出かけていて不在だったため、二人は彼の奥さんに案内されて、リビングで帰りを待つことに。……このコントは、主にサカキバラ不在のリビングでのやりとりで構成されている。 ニシオカはサカキバラを追い出そうという団地の方針に対して反感を抱いている。法の裁きを受け、無罪と判決されたサカキバラをどうして追い出さなくてはならないのか、と。対して、ツジはサカキバラのことを完全に殺人犯と決めつけ、この状況をむしろ楽しんでいる。リビングを物色しながら「やっぱり犯罪の匂

    シティボーイズ「灰色の男」(1993)|すが家しのぶ
  • 岡崎体育といつもここからのはなし。|すが家しのぶ

    少し前に、関西を中心に活動しているミュージシャン、岡崎体育の楽曲『MUSIC VIDEO』のプロモーションビデオが話題となった。同映像は2016年4月19日にYouTubeでアップロードされ、同年6月現在、視聴回数は間もなく400万回を突破しようとしている。また、同曲を収録した岡崎のメジャーデビューアルバム『BASIN TECHNO』(2016年5月18日リリース)は、5月30日付のオリコンウィークリーチャートで初登場9位を記録。まさに「今が旬」の状態だ。 『MUSIC VIDEO』はいわゆる“ミュージックビデオあるある”で構成された楽曲である。「♪カメラ目線で歩きながら歌う 急に横からメンバー出てくる」「♪倍速になって スローになって コマ撮りになっていく」「♪無意味に分身するよね」などなど、ミュージックビデオで目にしがちな演出が歌詞になっている。そして、作のプロモーションビデオには、

    岡崎体育といつもここからのはなし。|すが家しのぶ
  • バカリズム『屋上』のはなし。【完全版】|すが家しのぶ

    升野英知のソロプロジェクトになってからの活躍ぶりがあまりにも目覚ましいため、ついついコンビ時代のバカリズムのことを忘れてしまいがちだが、当時から既に彼(もとい「彼ら」)は才能に満ち溢れていた。実在しない仕事の数々をショートコント形式で紹介する『影の仕事』、同窓会に誘われなかったことを知らされた男がおもむろにワンピースへ着替え始めて……『ワンピース』、人間が挫折する姿をラジオ体操風に披露する『ラジオ挫折』などのように、他に類を見ない独創的なコントを生み出し続け、一部のお笑いファンから一目置かれていた。 そんな彼らのコントの中でも、僕が大好きだったネタが『屋上』だ。2003年12月31日から2004年1月4日にかけて、これまでに開催された「爆笑オンエアバトル」チャンピオン大会の決勝戦が再放送されたのだが(ゼロ年代のお笑いブームが最初の盛り上がりを見せ始めた時期とはいえ、日放送協会もなかなか思

    バカリズム『屋上』のはなし。【完全版】|すが家しのぶ
  • 陣内智則のはなし。|すが家しのぶ

    陣内智則の一人コントについて、適切に書かれている文章を読んだことがない。小道具や映像によるボケに対して陣内がツッコミを入れるというスタイルを「漫才を可視化している」と表現している文章を一度だけ見かけたことはあるが、それが彼のコントの質を突いているとも思えない。そこで、今回は陣内智則のコントについて、割と真剣に解説してみようと思う。もちろん、僕が勝手に思っていることなので、「これこそが正解だ!」と断言するつもりはない。あくまで、僕が陣内のコントについて、当に良いと思っていることをしっかりと説明したいだけだ。……なんてことを書くと、なんだか逃げ道を作っているように見えるかもしれないけれど。 結論からいうと、陣内智則のコントの最大の魅力は【孤独感】である。 ……恐らく、この僕の主張にピンときていない人は少なくないのではないだろうか。でも、考えてみてもらいたい。今、ピン芸人として活動している人

    陣内智則のはなし。|すが家しのぶ
  • アンジャッシュ『それぞれの会話』のはなし。|すが家しのぶ

    『爆笑オンエアバトル』五代目チャンピオンのアンジャッシュが、自己最高記録を叩き出したコントである。公園のベンチで偶然にも隣同士になった二人が、ほぼ同時に携帯電話で通話を始めるのだが、それぞれまったく違った話をしているにも関わらず、その内容が不思議な噛み合いを見せ始める。まずは導入。公園で寝ていた児嶋を渡部が起こす場面のコミカルなやりとりで軽めに笑わせて、その後しばらくは笑いがない。それぞれが携帯電話でどんな会話を展開しているのか、観客にじっくりと聞かせるためだ。渡部が明日デートする予定の恋人と、児嶋が愛娘を誘拐した犯人と会話している状態にあることを観客に認識させたところで(屋外でするような話じゃねーな、しかし)、このコントに仕掛けられたギミックがゆっくりと動き始める。渡部が明日のデートの件で「俺が行きたいところならなんでもいいの?」と言い、児嶋が誘拐犯の要求を飲むという意味で「ああ、言うこ

    アンジャッシュ『それぞれの会話』のはなし。|すが家しのぶ
  • ラーメンズ『現代片桐概論』のはなし。|すが家しのぶ

    『爆笑オンエアバトル』第一回収録でトップ合格となったコントである。その歴史的な価値を思えば「ゼロ年代のお笑いブームはラーメンズから始まった!」くらいのことは言ってしまってもいいような気がするが、コンビとしての活動が下火になってしまった昨今において、もはや生存しているのかどうかも定かではないアンチが奇跡的に蘇生するかもしれないので、その辺りはテキトーに濁しておこう。このコント、簡単に説明すれば「実際には存在しない生物の歴史・生態を研究する学問について説明する講義」である。……冷静に考えてみると、ちょっとコワい設定ではありませんか。とはいえ、小林賢太郎演じる講師の頭がオッパッピーしている風ではないので、ここは彼らが得意としている「パラレルワールドの日常」を描いたコントと捉えるべきなのだろう。学名やモンゴルのことわざなどを駆使して、完全なる嘘をディティール細かく解説しているが、これだけだと、なか

    ラーメンズ『現代片桐概論』のはなし。|すが家しのぶ
    Sugaya
    Sugaya 2016/05/16
    始めました。コントの話を思い付きでやっていく予定です。
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