女性が妊娠中絶を行う憲法上の権利を認めた、アメリカ合衆国最高裁の「ロー対ウェイド事件判決」(ロー判決)。1973年に下されたこの判決を、このたび最高裁がくつがえす可能性が高まり、アメリカは騒然としている。 ことの発端は、中絶の権利をめぐって最高裁に上告された「ドブス対ジャクソン女性健康協会事件(ドブス事件)」の法廷意見草稿を、何者かが外部に流出させたことだった。 5月2日に「ポリティコ」という雑誌に全文が掲載され、全米に出回った。ロー判決をくつがえすこの草稿の内容が、大きな変更なしで最高裁の最終的な法廷意見として発表されれば、妊娠中絶に関する憲法の解釈が根本的に変更される。 【前編】「日本人は知らない…「ロー対ウェイド事件判決」変更の動き、その背景にある「憲法解釈」の歴史」では、そもそもロー判決とはどのようなものなのか、その後の中絶の権利をめぐる最高裁の判決はどのようなものだったのかを振り