この日を前に、私が心に決めていたことがありました。 ここのところの独演会で、伯山先生が気になされていること、それは携帯。 今までも細心の注意を払い、お客様にかげマイクでしつこいほどに放送をしてもなお、鳴っていたことで、伯山先生の演目に支障が出ていた事実。 私の公演以外でも、名古屋の通し読みや地方の大ホールで響き渡っていたことを聞き、今回の長野では絶対に鳴らさせない、じゃあどうするか。考えた結果を今日試す。 いつものように地元ならではの食事をと到着してすぐお蕎麦屋さんでそばを手繰り、楽屋にご案内。物販の本にサインをし、舞台チェックも終わり、開場。 神田伯山長野独演会。チケットはもちろん完売。 二番太鼓を早めに鳴らし、開演5分前、私は意を決して幕前へ出ていきました。 「本日はご来場ありがとうございます。先ほど陰マイクでもご説明いたしましたが、もう一度携帯電話の件、お願いに参りました」 「講談に