去る7月25日夜明け前、DJ・プロデューサーの矢部直氏が心筋梗塞のためこの世を去った。周知のように彼は日本のクラブ・ジャズ・シーンを切り拓いたひとりで、その功績はとてつもなく大きい。また、彼は日本で暮らしながらも、その窮屈な制度や慣習に囚われないラディカルな自由人というか、まあとにかく、破天荒な男だった。世界の人間を、なんだかんだと社会のなかで労働しながら生きていける人と、アーティストとしてでなければ生きられない人とに大別するとしたら、彼は明白に後者に属する人だった。青山の〈Blue〉で、あるいは〈Gold〉や〈Yellow〉で、最初期の新宿リキッドルームで、めかし込んだ大勢の若者たちがジャズで踊っていた時代の立役者のひとり、90年代という狂おしいディケイドにおける主要人物のひとりだった。 ともに時代を生きてきたDJがいなくなるのは、とても悲しい。以下、矢部直氏とは違う立場で、日本のクラブ