日本初の赤外線天文衛星「あかり」による、中間赤外線での全天サーベイ観測(図1)は、どのようにして実現できたのか、今後どのような研究に発展していくのかを、一例とともにご紹介します。 赤外線で宇宙を観測するということ 赤外線は波長2~200μm(マイクロメートル)の、人間の目で見える可視光(波長0.5μm程度)と比べると波長の長い電磁波です。赤外線で観測する対象は、究極的には宇宙のはじまりと生命のはじまりです。宇宙は膨張しており、遠くの銀河ほど速い速度で遠ざかっています。このため、遠く(昔)の銀河から来る光は赤方偏移が大きくなって波長が伸び、赤外線領域で捉えることができます。また赤外線では、広い意味での惑星や生命の材料、つまり宇宙空間に漂っている、可視光では見えない固体粒子(塵)や有機分子からの熱放射や輝線を捉えることができます。 27年前、アメリカ・イギリス・オランダは共同で、赤外線天文衛星