4月から大学生になる親戚の子に寄せて。 自分は大学生になるまで、「印刷物ではない油絵」を見たことがなかった。 自分は北関東の山里の出身だ。最寄りの駅まで車で30分、まともな蔵書のある図書館は近隣の市まで行かなければなく、一番近い美術館がどこにあるのか未だに知らない。そういう場所で生まれ育った。 両親は芸術にまるで興味がない人だった。 高校生の頃、美術の授業で油絵を描く機会があった。 水彩画のような塗りしかできない自分に教師は「もっと絵に絵の具を乗せて」と言った。 しかし、当時の自分は何を言われているのか理解できなかった。 油絵というものを見たことがなかったからだ。 今思えば、当時は教科書や本に載っている絵が油絵なのか水彩画なのかさえ気にしたことがなかった。 時が経ち、自分は都内の大学に進学した。 大学には、それなりの家庭水準で育った人が多かった。周りは皆幼い頃から音楽や美術、文学に慣れ親し