アウトブレイクを把握するために、救急や集中治療の分野で症候群サーベイランスがおこなわれていますが、概念や検査そのものが確立していない時点では流行そのもののキャッチがおくれ、数のまとまりとして把握が困難です。
緊急事態宣言の終了を見据えた戦略が重要ですが、具体的にどのように安全に経済活動を再開するのか、どのように商店、レストラン、学校などを再稼働するのか? 米国CDCはタイトル写真のように保育園、学校、教会、レストランなど施設ごとに活動再開にあたって従うべきGuidelineを作成しました。(まあ、トランプ政権が待ったをかけたらしいけれど・・。 それでもCDCの該当するサイトに行くと色々と親切な指示があります) 例: Interim Guidance for Administrators of US K-12 Schools and Child Care Programs to Plan, Prepare, and Respond to Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)
Zou, L. et al. SARS-CoV-2 viral load in upper respiratory specimens of infected patients. N. Engl. J. Med. 382, 1177–1179 (2020). https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMc2001737 To, K.K.-W. et al. Temporal profiles of viral load in posterior oropharyngeal saliva samples and serum antibody responses during infection by SARS-CoV-2: an observational cohort study. Lancet Infect. Dis. https://doi.org/10.
「PCRをやらないでも、元気ならば発症後7日で退院させても大丈夫」という指針が米国のCDCから出ていますと教えて下さったのは京都市立病院の山本舜悟先生。 Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) 更にそれをバックアップするような「発症後7日目にはPCRど陽性であってもウイルス培養は陰性=ウイルスの破片はあっても生きたウイルスはいない」という論文も山本舜悟先生から教えて頂きました。 Virological assessment of hospitalized patients with COVID-2019 PCR陽性でも退院可能な軽症例が多数があり、そのような症例を退院させて本当に基幹病院の診療が必要な重症患者に集中すべきである・・というブログ記事を2月22日(土)に書きましたが、益々、その検討が必要になっています。 日本の基幹病院をコロナから守るために必要な
日本の基幹病院は新型コロナ以前で既に写真のトラックのような状態でした。そして新型コロナが加わった分だけ心筋梗塞や交通外傷が減るわけではなく、更にこの荷台に新型コロナを乗せようとしているのです。既に一杯の荷台に人を乗せるのですから、どうしても必要な人だけ乗せる工夫が必要です。 荷台に乗せるどうかの判断は「新型コロナであるか否か」ではなく「病院のケアが必要かどうか」です。 原因微生物が新型コロナでも、インフルエンザでも、肺炎球菌でも病院のケアが必要な人です。
小児科医が集まる学会や、ワクチン関係のイベントに、赤いシャツを着て参加している人たちがいます。 Tシャツに書いてあるのは「麻疹撲滅」や「はしかゼロ」等。 「それなんですか?」という会話から始まる啓発もありますから、個人でできるお金もかからない支援の一つでもあります。 数年前に亡くなったこどもたちのことを、看取らざるを得なかった家族の悲しみを忘れていない人たちが今も現場にいます。 IASR「沖縄県における麻疹流行と、 地域における取り組みについて」 台湾からもちこまれた麻疹は、その後、沖縄県内に広がっており、現時点ではまだ終息の目処はたっていません。 一番最初のケースから、うつったひとたちを「2次感染」といいます。 よく教科書にある赤いブツブツの症状、口の中の特徴的な症状(コプリック斑)をみたら「麻疹かな」と思うと思いますが、最初に受診するときは発熱/咳/ウルウルした赤い目など、風邪とみわけ
今年はA型がインフルエンザ全体の7割を占め、ワクチンは25%しか有効でなかった・・とCDCの研究者は言う。 より精密に有効性は・・ A (H3N2) 型に25% B型に42% A型 (H1N1)pdm09には67% でも「有効性」という言葉に注意が必要で、通常の有効性は「罹患を防いだかどうか」で測定されるが、もっと大事な事は「肺炎などの合併症や死亡を減らすか」がより重要である。 でも残念ながら「肺炎などの合併症や死亡を減らすか」の測定は特別な研究でなければ測定できないので表現されにくい・・ (William Schaffner, MD, of Vanderbilt University School of Medicine) 詳細は以下をどぞ↓↓ https://www.medpagetoday.com/infectiousdisease/uritheflu/71181?xid=NL_br
(論文や記事について期間中の追加情報をいただいたので加筆2016-10-02) ほぼ定期的HPVワクチン関連情報ですが、海外の専門家や読者の方にいろいろリクエストをいただいていたのを、各国の専門家に確認などしていたらこの時期になってしまいました。臨時増刊号的に7月・8月・9月合併記事です。 そういえば、2016年夏は、HPVワクチン10周年記念でしたね。 MedscapeのTimeline: 10 Years of the HPV Vaccine なども参考に。 ------------------ 1982年 HPVが子宮頸がん発生に関連していることがわかる (そこから24年) 2006年 初のHPVワクチン(4価)が承認される(米国等) 2009年 2つ目の2価HPVワクチンが承認される 2011年 9月 間違った情報が広がる(ある議員が「HPVワクチンを接種すると知的発達に障
MRワクチン接種が普及したら麻疹が流行しなくなって、若いドクターも麻疹を診る機会がなくなりました。 早期診断の際の課題です。 2015年3月に麻疹排除達成してから、もう対策が終わったと思われているかもしれません(そう思いたいほどたいへんでした)。 でも、麻疹排除のあとも努力が必要です。伝えていくという仕事です。 2013年には「風疹」レクチャースライドをいくつもつくりました。 2016年には「麻疹」レクチャースライド作成をしています。
米国でベストセラーとなったThe Culture of Fearは日本語訳があって(『アメリカは恐怖に踊る』)amazonで中古をみつけることができました。著者はもともとジャーナリストであった、南カリフォルニア大学教授→現在はオレゴンの大学の学長をしているBarry Glassner教授。 メディアによって煽られた不安によって、望ましくない行動をとる、という米国社会の問題を扱う本です。 p.231からが 恐怖の予防接種『ワクチンルーレット』 です。 (略) "問題の騒動がはじまったのは、正確に言えば1982年4月19日の夜だった。その夜、ワシントンDCにあるNBC系列のWRCテレビが『DPT-ワクチン・ルーレット』と題する1時間のニュース・マガジンを放映。その瞬間、あらたな医学現象が誕生した。ワクチン後遺症である。 番組では、子どもへの接種が義務づけられているジフテリア、百日咳、破傷風の三
2006年に世界で承認販売が始まってから、ことしで10年目。臨床試験中のデータを含めると10年以上のデータがあります。新しいワクチン、思春期のワクチン、女性に接種するワクチンということで各国で導入初期には副反応に関連する話題も熱かったですが、さすがに9年もたったところで、○○が問題だという「騒動」はごく一部の話になっています。 いっときフィーバーしていた米国でもメディアの扱いが小さくなると有害事象の報告も減っています。 現時点では、このワクチンの接種の安全性は他のワクチンと変わらないレベルと評価されています。 WHO、世界の専門機関も(恵まれた国でのアクセスの話ですが)推奨をしています。 【整理の仕方】 「よくある副反応」 「まれな副反応」 「とてもまれな副反応」 「副反応とは考えにくい紛れ込みの症例」 「有害事象だが副反応とは考えにくいもの」 といったかたちで整理ができます。 刺したとこ
昨日のNHKクローズアップ現代はMERS特集でした。 現地の取材の画像の中で、患者が発生した病院の医師がインタビューに答えていました。 そこで見たのは・・・・「サージカルマスクの上にN95」 感染管理関係者は どひゃー! と思ったでしょうし、よく知らない人たちは「そうか!2枚、2種類重ねれば最強だ!」と誤解をしたかもしれません。 ・・・NHKには テロップで ★この使い方は正しくありません といれてほしかったです。 というか・・・インタビューのときになぜマスク。 (画像的に依頼をしたのかわかりませんが) 韓国の医療機関における基本的な感染管理対策ってどうなんだろう・・・と思ったわけです。 突然ですがコンドームも2枚重ねはダメです(やぶけやすくなります)。
昨年のエボラ騒動のときから、エボラは日本に入ってくると思うか? と何度も質問を受けました。 入ってきてもおかしくはないけど、出国時検疫含めた外国に入らないための対策をギリギリまでやってるので、直行便もない日本にはいる確率的にはゼロに近く、入ってくるならMERSでしょ、と話してたときはMERSはスルーされていました。 今週はMERSのといあわせばかりです。 MERSはどんな病気か感染経路から語ってくれ、という記者には、まずは"ずいぶん前から"公開されている厚生労働省のQ&Aを読んで、さらに質問があったら連絡ください、と伝えてあります。 なんとか語らせたい内容は、韓国の関係者に落ち度があった、医療機関が失敗をした、日本でも起きかねない、厚労省の対応が十分でない、などの批判記事で、個人や社会を守る視点ではないことが残念です。 2012年からのとりくみをまずざっとレビューするところから始めればいい
昨日は日本語のMERS情報をみていたら、いくつもの自治体でMARSと書いてあることに気づきました。 SARSと似たようなもの?と思うと、ついAをタイプしてしまいそうですね。 複数あったので連絡していませんが、皆さんの地域の行政や保健所のHPの記事が古かったら教えてあげてください(^^)。 お問い合わせ情報で多いのは 報道関係「変異した恐怖のウイルスになったんでしょうか?」 →あとからわかることです 「日本でちゃんと診断できるんですかねえ」 →診断はできますが、検査を出すためにうたがえるか そもそも鼻水とのどが痛いだけ(軽症者)の人は病院にきませんから把握できません 医療関係者「で?私たちは今なにすればいいんですか?」 →渡航歴、症状(症候群)情報をもとに初期対応のactivationができるのか 皆で再確認。「MERS対応」「エボラ対応」と固有名詞でやると抜けが生じます。 一般の方「韓国旅
先週、韓国ではバーレーンなどの中東国渡航歴のある男性を発端とするMERS-CoVの広がりのニュースがありました。 広がりと行っても、接触者リストからの把握なので、わかってからの対策としてはうまくやってると思いますが(指示に従わないで移動や拒否をする人の話はまた別の機会に)、医療関係者は学習すべき点がいくつかあります。 臨床での初動はどうすべきなのか、これは特定の条件の患者が来る前からできることです。 渡航歴を必ず聞くとか、次のアクション2-3をスタッフに明確に伝えておくことです。 韓国では家族が入院すると、家族が身の回りの世話をするのは自然なことで、患者のベットの横に置ける付き添いベッドもあります。 渡航歴ありの肺炎症例では一時的に面会を控えてもらうような説明、接触者には検疫や公衆衛生専門家の指示を守ってもらう説明が重要になります。 日本人への説明だけでなく、外国人への説明もしなくてはなら
全国のICNがフル稼働するシーズンです。 皆様ICNを大切にしましょう。 金曜日の16:30くらいからは、魔の時間帯です。ここで「○○病棟ですけれども・・・」 「・・・・なななんでしょう」 「実は・・・」ということがよくあります。なぜ金曜の夕方なんだろう(ブツブツ)といいながら週末もせっせとするICN。 専従になったとたん年収が〜100万近くさがり(夜勤手当が減ります)、時間外業務も増え、という中奮闘中です。 最近は、近隣の医療機関や施設の支援も仕事です。 この時期は高齢者施設に出かけて、スタッフの勉強会の講師をしたりもしています。 そのようななかで「うわああああああ」となるようなお話は多々あり、おそらくICNでもちよったら数冊の単行本がシリーズで出せるくらいの事件は各地でおきています。 今回はその1例(各地で経験されているお話ですが) とあるICN。あるところ(保育園だったり病院だったり
(追記あり) SARSのときにアジアの周辺国に拡大していかなかったことや、米国に1例もはいらなかったことは幸運という語りが学会でもされますが、 エボラについては直行便が流行地からとんでいるEUで、関係者がたくさん行き来しているなかで、いままでのところ、うたがい検査はすべて陰性、「血液・体液曝露でうつる感染症」はそもそもその濃厚接触がないところでは広がりにくいのだということが実感されているなかですが、うたがいの時点だけで犯罪者であるかのように扱うこのメディア、個人情報漏えいが公的機関からおこる国で、別の意味の恐怖が生じています。 各国のリスクアセスメントの専門家とは真逆のことを書く雑誌もあります。複数筋に取材をするという基本をやっていないのか、最初から書きたいことがあって都合のよい情報・コメント集めだけしたのかもしれませんね。 エボラ・パニック 日本上陸は目前「人類滅亡まで、あと100日」の
ただ事象やリスクだけ書くと、対応がわからない不安と合わせて過剰な恐怖を生みます。 そして、そういった不安定な心理は思考にも影響し、しなくていい対応ミスや判断ミスにもつながる、、というのがリスク・コミュニケーション、クライシス・コミュニケーションの基本編で学ぶことです。 ○○が発生!←このびっくりマークの乱用も×。 気をつけよう、注意しよう、もなんのことだか伝わらないので×。 ちゃんと、しっかり、も意味不明。 手を洗って欲しいなら、どのタイミングでどのようにやるのか?が必要な情報です。 action levelで伝えましょう、が原則。 ギニアでのエボラウイルス感染症がニュースになっていますが、日本から支援に行く人からの報告もいずれあるかもしれませんね。 昔、日本チームの一員として流行地に出かけた医科研の岩本愛吉先生の報告会での長靴の話、臨時のP4テントの話、内戦や経済活動が感染症流行に及ぼす
HPVワクチンについて、メディアの混乱もみています。 (社内に疫学データを読む訓練を終えている方がいたら確認されるといいですよ・・・・) 基本的な整理をしておきますと、取材や報道の切り口が 1)特定の医薬品の有効性や安全性の話 ならば製品ごとに検討が必要ですので、「子宮けいがんワクチン」ではなくて、2価と4価を分けて論じる必要があります。複数のものを、いっしょくたにして否定するつもりで書いている記事をときどきみかけます。 例えば、抗がん剤全否定論のひとは、個別のデータや事情無くだめなものはだめだ、というスタンスになりますが、実際の「医療」としては、個別のケースで病態やフェーズ、事情、本人や家族の考え方等も違うので、安易に一般化するのは難しくなります。 特定の医薬品の安全性や有効性の方法は、それぞれのデータを評価して、です。 2)接種後の有害事象が問題、という記事を書きたいならば、調査方法、
梅毒は、ある世界では「梅ちゃん」とか「梅吉」という言い方で親しまれている(?)ことは臨床で学んだことのひとつです。 机の上で医学書だけで勉強しているとそういったことはわかりません。 治療法もあるし、周囲に経験者も多数いる。別にショックを受けるほどのことでもないこの病気は、予防の動機付けも難しいのかもしれませんし、予防をしようと心に決めたとしてもその方法が困難、という問題もあります。 ですが、風疹でも痛感しましたが・・・・感染が広がるとたいへんなことになる感染症は初動が大事ですよ。 最終的に一番弱いところにつけがまわってきます。 梅毒も同じ。 「先天梅毒の一例」2012年の症例は、31週で母体の緊急搬送。31週と5日で帝王切開となりました。 いろいろ調べて胎盤からスピロヘーターを確認して、梅毒感染、赤ちゃんは先天性梅毒とわかった症例です。 IASR 2013年4月「本邦における先天梅毒発生予
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