「秘境駅」とされる条件のひとつに挙げられるのが発着する列車本数の少なさ。その意味ではJR日豊線の宗太郎(そうたろう)駅(大分県佐伯市)は究極の存在だ。駅の時刻表を見ると、特急列車の通過はあるものの上りは6時39分と20時35分の佐伯行きが2本。一方の下りは6時54分の延岡行きの1本だけ。この列車は始発にして最終列車なのだ。列車で駅を訪れることは、まさに至難の業といえるだろう。 人名由来の駅名宗太郎は大分、宮崎両県境の山越え区間にある。駅名の由来は人名。江戸時代にこの付近を治めていた岡藩に命じられ、山の見回りをしていたのが「洲本宗太郎」という人物だった。もともとは大正12(1923)年に信号場として開設され、昭和22年に駅に昇格した。47年に無人駅となり、現在は駅舎は撤去されて基礎のみが残り、キップ回収箱が設置されている。駅周辺には人家が10軒ほどあるが、静かだ。 宗太郎駅の駅名標。江戸時代