「新入生にすすめる本」について語るというのは、老人が過去の過ちを振り返りながら、同じ過ちをしないよう青年に与える教訓に似ている。そうした老人の教訓を忠実に守るような青年は、独創性の乏しい青年である。恋愛の危険については古来幾度となく諭されているにもかかわらず、青年はつねに危険な恋愛に身を委ねることをやめないではないか。人生は冒険である─―そう説いた三木清の読書論は、おそらく彼の全仕事のなかでも、最も卓れた文章の一つに属していると、私は思っている。 ① アリストテレスからバグワン・シュリ・ラジニーシまで、駒場で過ごした教養課程の二年間に、自ら読み、また読まされた書物の多様性を考えれば、省みて、青年期の読書は、たしかに冒険そのものであった。いまの自分を造形した書物に心当たりがないわけではなく、それはまた抜き難く時代性を刻印されているものでもあるが、読書遍歴はまさに恋愛遍歴と同じであって、「自