「ひきこもらない」の反対は「ひきこもる」になるはずで、54万人と言われるひきこもりの人々を擁するこの国への提言っぽいものかと思った。でもそういうまっすぐな話ではなかった。 一カ所に留まり、同じ仕事、同じ人間関係の中で長い間生きていくことができないという著者。街のいろんなところへウロウロと出歩き、時にブラリと違う街に旅に出て、引越しを繰り返しながら暮らすという日々を綴ったエッセイだ。と書くと、全然ひきこもりと関係ないじゃないってなりそうだけど、まったく無関係というわけでもない。 著者は基本的に他人とのコミュニケーションが苦手で、やる気や根気、体力も十分とは言えない。そして家にいるよりも、外の世界の方が素晴らしいなんて思っていない。性分としては間違いなくインドア派である。 しかし著者の場合は、性格や経済の都合上、家に閉じこもっているわけにもいかず、とりあえず玄関から外には出る。生産性やコストパ