本研究は小学1~6年生155名を対象に漢字書字課題を行い、正しく整っている/判読可能の2基準で採点し、学力および視覚情報処理能力との関係を検討した。結果、双方の採点基準で学力との相関を認めたが、整った文字は判読可能文字に比して相関係数が有意に高くはならなかった。また文字の正確性や綺麗に書くこと自体が学習となる下学年では整った文字と視知覚および視覚認知の相関が強く、相関は学年が上がると弱くなることから、整った文字を習得する過程では視知覚・認知機能の負荷が高く、上学年で整った文字を書くためには文字の詳細なイメージを思い浮かべる必要性から視覚性ワーキングメモリーへの負荷の高さが示唆された。よって学力を従属変数とした場合に正しく整った文字が書けることの蓋然性は確認されず、文字形態を整える指導に注力することは、発達障害をはじめとする認知機能に個人内差のある児童の学習到達度には好影響とはならない可能性