8月27日をもって、京アニ事件の犠牲者35名全員の名前が公表されることとなった。事件発生から40日後まで公表がずれこんだ異例の事態の背景には、遺族の意向、そして1万5千人超の“公表反対”署名運動も起きた「世論の壁」がある。通常通りの対応をするつもりだった京都府警に対し、東京の警察庁から“待った”がかかるなど、混乱を極めたのである。 *** 3年前にも、同じようなケースが議論されたことがあった。これもまた、戦後史に残る重大事件・相模原「やまゆり園」の殺傷事件である。犠牲者19名の遺族は、神奈川県警に実名公表しないことを依頼した。知的障害者の施設ということもあり、県警は今に至るまで公表しないままだ。 が、 「それぞれに考えはあると思いますが、私自身は、実名を出すことに迷いはありませんでした」 と言うのは尾野剛志さん。尾野さんは息子・一矢さんが重傷を負う被害に遭ったが、事件直後から実名を出して夫