「規模拡大や競争力を意識した農業生産が加速してきた一方で、それに伴う恩恵を実感できたのは一部の農業法人にとどまる。高齢化が進む地域では農家が激減した」。北秋田市の山あいにある前田地区で農業法人「みそらファーム」を経営する若松一幸社長(52)はこう話し、地域の農地の行く末を心配する。 同法人は約60ヘクタールで水稲やソバを生産しているが、中山間地のため一つ一つの農地は小さい。220枚の水田が9集落に分散し、平地と比べ作業効率は悪い。それでも大手外食業や小売店の販路を開拓したり、農業法人内で情報を共有するアプリを活用するなど経営に工夫を凝らしたりすることで、担い手のいない農地を極力引き受けてきた。「農地が荒廃すれば自然環境が悪化し、ここに住みたい人がいなくなる」との危機感からだ。