その男は、何かにつけガンダムで例えた。 「そいつがさ、ガンダムでいえば、アッガイみたいな立ち位置の奴でさ……」「ガンダムでいえばキャスバル兄さんを思うアルテイシアの気持ちだね」「すごい。こいつはまるでサイド7だ」「いま、俺を踏み台にした?」 私はその男を深く愛していたが、ガンダムについては、それが白くて角の生えたロボットだ、ということ以外まったく知らなかった。だから、いつも、あいまいにうなずくほかなかった。 四年間、あいまいにうなずき続けた。 そして今、彼は私の目の前で、私にビロードの小箱を差し出しながらもごもごと何か言いかけている。彼が予約した、私たちには少々不似合いなフレンチ・レストランで。 彼はこんなときでも、例えるのだろうか。私は今、プロポーズされていること以上に、そのことについてわくわくしている。 もし彼がガンダムに例えたら、受けよう。そんな風にさえ、思っている。