安倍晋三首相は、佐川宣寿氏を国税庁長官に充てる人事を「適材適所」とかばい続け、与党は国会招致も拒否してきた。だが、書き換え疑惑への対応が後手に回って国会の混乱が続き、追及に抗しきれぬ形で辞任に追い込まれた。政権にとって打撃となるのは確実だ。 野党6党は、財務省職員への聞き取り調査結果が報告されないことなどを不服とし、9日も国会審議に応じなかった。公明党の井上義久幹事長も同日の会見で政府の対応の遅れを指摘し、「極めて遺憾だ」と不快感を示すなど、与野党問わず政府、財務省への不満が高まっている。 国税庁長官の辞任で、政権は決裁文書の書き換え疑惑を少しでも収束に向かわせたい考えだが、疑惑の解明につながるものではない。官邸幹部も「これでおしまいになるとは思っていない」と語るなど、事態収拾は見通せていない。