4月5日に亡くなられたアニメーション映画監督の高畑勲さん。過日、三鷹の森ジブリ美術館(東京都三鷹市)で行われた「お別れの会」で、二階堂和美さんの歌う「いのちの記憶」を聴いた。遺作となった「かぐや姫の物語」の主題歌。高畑さんとの別れにこれほどふさわしい曲はない、と思った途端、涙がこぼれた。 高畑さんに手紙を書いたのは、昨夏だった。映画「火垂(ほた)るの墓」を作られ、古今の芸術表現にも精通する高畑さんに、丸木位里・俊の連作「原爆の図」について語ってほしいと考えたのだ。 最初は返事が来なかった。あきらめきれず2度目の手紙を書いた。すると、がんのため入院し、手術は成功したが、「原爆の図」に後ろめたい感情を持っているので、うろたえて返事ができなかった、とメールをいただいた。 高畑さんは高校生の時、岡山の天満屋へ巡回した「原爆の図」に出会っていた。占領軍の言論統制で、原爆について何も知らされなかった青