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ブックマーク / morningrain.hatenablog.com (7)

  • ヤン・ド・フリース『勤勉革命』 - 西東京日記 IN はてな

    副題は「資主義を生んだ17世紀の消費行動」。タイトルと副題を聞くと、「勤勉革命なのに消費行動?」となるかもしれません。 「勤勉革命」という概念は、日歴史人口学者の速水融が提唱したものです。速水は、江戸時代の末期に、家畜ではなく人力を投入することで収穫を増やす労働集約的な農業が発展したことを、資集約的なイギリスの産業革命と対照的なものとして「勤勉革命」と名付けました。 書によると、この労働時間の増大は17世紀後半のオランダにも見られるといいます。著者は、およそ1650〜1850年の時期を「長い18世紀」と呼んでいますが、この時期、世帯単位の労働時間は増えていきました。 この時期のオランダで「勤勉革命」などと言うと、マックス・ウェーバーを読んだ人であれば「プロテスタンティズムの影響?」と思うかもしれませんが、著者が書で指摘する要因はずばり「消費」です。 この時期のオランダでは、陶器

    ヤン・ド・フリース『勤勉革命』 - 西東京日記 IN はてな
  • ダロン・アセモグル&ジェイムズ・A・ロビンソン『自由の命運』 - 西東京日記 IN はてな

    『国家はなぜ衰退するのか』のコンビが再び放つ大作。「なぜ豊かな国と貧しい国が存在するのか?」という問題について、さまざまな地域の歴史を紐解きながら考察しています。 と、ここまで聞くと前著を読んだ人は「『国家はなぜ衰退するのか』もそういう話じゃなかったっけ?」と感じると思いますが、書は分析の道具立てが違っています。 前著では「包括的制度/収奪的制度」という形で国の制度を2つに分けて分析することで、経済成長ができるか否かを提示していました。「包括的制度」であれば持続的な経済成長が可能で、「収奪的制度」であれば一時的な成長はあっても持続的な経済成長は難しいというものです。 ただし、この理論にはいくつかの欠点もあって、「収奪的制度」という同じカテゴリーに、アフリカの失敗した国家からかなりしっかりとした統治システムを持つ中国までが一緒くたに入ってしまう点です。「どちらにせよ支配者が富を奪ってしま

    ダロン・アセモグル&ジェイムズ・A・ロビンソン『自由の命運』 - 西東京日記 IN はてな
  •  苅部直『「維新革命」への道』 - 西東京日記 IN はてな

    明治維新で文明開化が始まったのではない。すでに江戸後期に日近代はその萌芽を迎えていたのだ――。荻生徂徠、居宣長、山片蟠桃、頼山陽、福澤諭吉、竹越與三郎ら、徳川時代から明治時代にいたる思想家たちを通観し、十九世紀の日が自らの「文明」観を成熟させていく過程を描く。日近代史を「和魂洋才」などの通説から解放する意欲作。 これが裏表紙に書かれているこのの紹介文。政治思想史を専攻する著者が、文明開化を用意した江戸時代の思想家について書いたになります。 もともと雑誌『考える人』で連載されていたものということもあって、20ページほどの中で一人の思想家をとり上げ、その中で江戸時代の思想の特徴と変遷を見出そうとしています。 目次は以下の通り。 序章 「諸文明の衝突?」から四半世紀 第一章 「維新」と「革命」 第二章 ロング・リヴォルーション 第三章 逆転する歴史 第四章 大坂のヴォルテール 第五章

     苅部直『「維新革命」への道』 - 西東京日記 IN はてな
  •  中村元『近現代日本の都市形成と「デモクラシー」』 - 西東京日記 IN はてな

    副題は「20世紀前期/八王子市から考える」。東京の八王子市の1920年代後半から1940年代前半の都市展開と政治情勢を追いながら、普通選挙導入によって政治の世界へと躍り出た「無産」勢力が、地方政治においていかなる動きを見せたのかということを探ったになります。 博士論文をもとにしたで、歴史学の難解な概念や言葉が使われているので、ややわかりにくく感じるところもあると思いますが、普選導入から戦争へといたる政治状況に興味がある人にも、また、八王子を中心に東京の多摩地域の歴史に興味を持っている人にも、非常に面白い材料を提供しているだと思います。 ちなみに著者は「なかむら・もと」と読み、高名な仏教学者の中村元(はじめ)とは別人物です。 目次は以下の通り。 序 章 日近現代史研究における都市史研究とデモクラシー研究の交点 ――問題の所在と書の視角 第一章 男子普通選挙制導入期の大都市近郊都市―

     中村元『近現代日本の都市形成と「デモクラシー」』 - 西東京日記 IN はてな
  •  速水融『歴史人口学の世界』 - 西東京日記 IN はてな

    速水融(名前はあきらと読みます)の研究についてはいろいろな所で聞いていたのですが、実際にを読んだのは初めて。 でも、これは面白い研究ですね。書は岩波市民セミナーでの講義をまとめたもので、まさに歴史人口学の入門書といったものなのですが、それでも歴史を学んできたものとしてさまざまな新しい発見がありました。 歴史人口学とは、歴史を「人口」の観点から見る学問なのですが、人口がたんに増えたり減ったりということに注目するわけではありません。例えば、増えたのなら何らかの出生率の増加や死亡率の減少が起きているわけですし、減ったのなら何か天災が起こったのかもしれません。 人間は突然大量に出現したりすることはなく、すべての人間はその父親と母親の間から生まれてきます。一家が貧乏ならば子どもを生んで育てる余裕が無く子供の数を減らすかもしれませんし、逆に生活水準が上がって子どもの死亡率が下がったので、子どもをた

     速水融『歴史人口学の世界』 - 西東京日記 IN はてな
  •  曽我謙悟『現代日本の官僚制』 - 西東京日記 IN はてな

    もちろんこれは歴史的事実とは異なる。歴史的事実としては、官僚制は君主制や権威主義体制の下で王や支配者に仕える統治機構として、長らく存在してきた。そうした官僚制の中には、民主化の際に抵抗を見せ、民主化後も議会にの統制に服しないものも見られた。しかし、たとえ事実としてそういった官僚制が存在するとしても、現代の民主制の下では正統性を得られない。正統性を備えない存在が長期にわたり持続することは不可能である。歴史的事実には反するフィクションであっても、社会契約説に基づき代表民主制を捉えることが、その性格を理解する上で有効であるのと同様、官僚制もまた、現代民主制における人・代理人関係のなかに位置づけることが、その最適な理解の方法である。(42-43p) これは、このの第2章にある「政治家たちと官僚制の関係は、人・代理人(プリンシパル・エージェント)関係の典型例であり」という文章につけられた注です

     曽我謙悟『現代日本の官僚制』 - 西東京日記 IN はてな
  •  板橋拓己『黒いヨーロッパ』 - 西東京日記 IN はてな

    副題は「ドイツにおけるキリスト教保守派の「西洋(アーベントラント)」主義、1925~1965年」。副題を聞いてますますの内容がわからなくなったという人もいるかもしれません。また、副題からものすごく小さな問題を論じているという印象を受ける人もいるかもしれません。 しかし、実はこの、ヨーロッパの統合史に一つの補助線を引き、現在のEUを考える上でも重要な知見を教えてくれるなのです。 目次は以下の通り。 序 章 第1章 キリスト教民主主義の国際ネットワークとヨーロッパ統合 第2章 第一次世界大戦後の「西洋」概念の政治化―雑誌『アーベントラント』とヘルマン・プラッツを中心に 第3章 「アーベントラント」とナチズム 第4章 第二次世界大戦後のアーベントラント運動 アーベントラント(Abendland)は日語では「西洋」と訳されることが多い言葉で、第一次世界大戦後に書かれたシュペングラーの有名な

     板橋拓己『黒いヨーロッパ』 - 西東京日記 IN はてな
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