わが国の地震対策はなぜ予知に偏ってきたのか、誰がそうさせたのか。東京大理学部のロバート・ゲラー教授(59、地震学)が新著『日本人は知らない「地震予知」の正体』(双葉社)で、ゆがんだ実態を当事者の実名入りで明らかにした。その“元凶”は30年以上も昔、ある法律の制定にさかのぼる。 これまで科学誌になどに論文を発表してきたゲラー氏が、専門知識がなくとも理解しやすい本の出版に踏み切った。「地震は周期的に起きる。前兆があるというマインド・コントロールから多くの人が脱してほしい」との強い思いが、教授のペンを走らせた。 ゲラー氏によると、かつての地震予知は少額の予算しか確保できない「研究計画」にすぎなかった。ところが69年、政治力によって「実施計画」へと格上げされ、高額予算の配布が可能に。年70億円が支出されるナショナルプロジェクトとなった。 76年、東海地震の危険性が指摘されると、予知態勢整備へ