宇野常寛という人の文章; 解説しよう。そもそも「政治の季節」退潮後、批評が単体で求心力を持つ ことはなかった。そこで八〇年代の「ニューアカデミズム」は代理店 ビジネスと結びつくことによって「場」を形成した。だが、そのモデル も長くは続かなかった。 では、その後に登場した宮台真司はどうしたか? はっきり言ってしまえ ば、読者の性愛コンプレックスに訴えたのだ。同じ偏差値なら、地頭の 悪いやつほどコミュニケーション下手で、満たされないプライドを確保 するために本を読んでいる(無論例外はあるが)現実――というのは四年 制大学におけるコミュニケーションを観察していれば誰でも気づく(そし て当事者たちは死んでも認めたがらない)「常識」だが――を背景に、 宮台は求心力を確保するために「モテたければ俺の本を読んで修行しろ」 というメッセージを「暗に」発信することを選んだのだ。その結果、九〇 年代の宮台真司